自己破産における弁護士と司法書士との業務の違いとは

自己破産の流れに沿って説明していきます。
 

Contents

(1)受任通知

破産申立をする場合、まず、債権者に受任通知を発送します(※1)。
弁護士はもちろん、司法書士も作成して送付することが可能です。
 

(2)申立て

自己破産は、裁判所に申立をしなければなりません。具体的には、破産申立書を作成して提出します。
弁護士に依頼した場合、弁護士が代理人となり、自己破産を申し立てることができます。書面には、「申立人代理人 弁護士 ○○○○」と記載します。
一方、司法書士は代理人になることができないので、申立書の作成はできます(※2)が、破産者本人が申し立てることになります。
 

(3)申立書の補正

申立書に誤りの記載があったり、追加で揃えてほしい資料があった場合に、裁判所から補正の指示がきます。これは書面での回答ができますので、弁護士も司法書士もすることができます。
 

(4)裁判官との面談

申立後、免責決定(借金をゼロにすること)が出る前に、裁判官との口頭審査がある場合があります。
この場合、本人が出頭しなければならないものもありますが、代理人弁護士だけで対応できるものや、本人と代理人弁護士と二人で対応できるものがあります。
一方、司法書士には上述のとおり代理権がないので、本人のみが出頭して質問に答えなければなりません。
 

(5)免責審尋

裁判官が債務を免責しても良いかどうかを判断するために、本人と面談をする手続きです。これは必ず本人が出頭しなければならないものです。
ただし、弁護士は代理人としての資格があるので、本人と一緒に出頭できます。また、代理人として意見を言うこともできます。
一方、司法書士は同席することができません。
 

(6)免責決定がおりずに、管財事件(※3)になった場合

管財事件になった場合、裁判所へ「予納金」を支払わなければなりません。予納金は、破産管財人の報酬や費用に充てられるお金です。弁護士が代理人となって破産申立している場合と、司法書士が申立書を作成して本人申立をしている場合とでは、予納金の金額が変わってきます。
弁護士が代理人となっていれば、予納金は20万円であるのに対し、司法書士に依頼している場合は、原則50万円になります。
 

まとめ

司法書士は代理人になれないといっても、(1)~(3)は弁護士とほぼ変わらずに業務ができるといえます。申立書の提出も司法書士が行っているのが実情ですし、郵便物の送付先も司法書士宛にできます。ただ、法的には本人申立と扱う、ということです。(4)や(5)の面談も、事前に司法書士との打合せをしっかりしていれば、問題無く終わることがほとんどです。
しかし、司法書士は「身近な法律家」と言われており、基本的な業務は書類作成が中心です。破産の場合も、書類作成が主な業務になるので、その分依頼するときの費用が、弁護士より安く設定されていることがほとんどです。ただし、(6)記載のとおり、管財事件になると、結果的に費用が高くかかった、ということになりかねません。
依頼した後に管財事件になるかもしれない事情がでてきたり、自分では裁判官の面談に適切に答えることが難しい場合もあります。特に、管財事件になるかならないかの判断が難しい案件の場合は、弁護士に依頼するのが賢明です。
また、個人の破産でも、大きな事業をしている場合は、会社従業員や顧客との対応が必要になり、司法書士では対応が難しい場合があります。このような大規模破産の場合は、代理人として動ける弁護士のほうが適しているといえるでしょう。
よって、管財事件にならないと言い切れない場合や、大規模破産の場合は、弁護士に依頼するのが安心です。
   
※1 受任通知を発送すると、債権者に借金の取り立てを禁止する効果があります。よって、破産を含む債務整理をする場合は、受任通知を各債権者に発送します。
 
※2 司法書士の業務の一つとして、「裁判所へ提出する書面作成」業務があります(司法書士法3条1項4号)。
 
※3 「破産管財人」と呼ばれる弁護士が選任され、詳細な財産調査がされ、処分や管理等を行う。最終的に破産を認めても良いかの調査もするので、破産が認められるまでに1年以上かかる場合もある。

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